本邦における測定体系は一次検量用標準物質(p-cal)とIFCCによる基準測定操作法を取り入れ、これによる二次検量用標準物質(Lot.2)の値付けを行います。この標準を上位に組み入れ、さらに、常用基準法としてのKO500法をJSCC基準測定操作法とし、常用実試料標準物質の値付けに繋いでいます。併せて従来の国内標準化による測定値の互換性を現状で維持するために、二次検量用標準物質(Lot.2)にKO500法で値付けし、これを製造業者標準測定操作法に繋いでいます。
日本の基準測定操作法 基準測定操作法の信頼性については、4施設(HECTEF SRC、慶応義塾大学医学部中央臨床検査部、日本板橋病院臨床検査部、病態解析研究所)において、年2回継続的に整合性維持のため共同実験が行われ、設定した条件を満たす成績が得られています。
IFCCと本邦のHbA1c測定体系の関係 IFCCと本邦のHbA1C測定の基準測定操作法は、厳密に言えば測定対象物質が異なります。ペプチドマッピング法によるIFCC法は、ヘモグロビンのβ鎖N末端バリンのアミノ基にグルコースが共有結合したすべてのヘモグロビンを、本邦ではHPLC法によるKO500法は、ヘモグロビンβ鎖N末端バリンのアミノ基にのみグルコースが共有結合したヘモグロビンを測定対象物質としています。したがって、ヘモグロビンのN末端以外に結合する糖の数に違いがあります。しかし、2つの測定法の間には、原点を通る直線関係が有り、かつ、HPLC法の相対値傾向で、絶対値が得がたいことから、IFCC法を絶対基準とすることがより堅固な体制構築に必要となります。このことは同時に、IFCC値との間に直接なトランスフォーラビリティとトレーサビリティを維持することになります。
基準測定施設(リファレンスラボ)の役割 基準測定施設(リファレンスラボ)の役割は、共用する測定法を検討し合意のうえで基準測定法を更に完成させること、信頼できる測定手法を維持しリファレンスラボ網内で整合性の取れた測定を持続的に実現すること、日常測定への精度の伝達の要となる具体的作業を行うことにあります。これらを実現すれば、各国でのリファレンスラボを中心とする標準化作業を進めることで、世界中の基準測定施設間差は縮小し解消されるでしょう。 <参考文献> 1) 日本臨床化学会 糖尿病関連指標専門委員会:HbA1c測定のためのレファレンスラボラトリー設定指針. 臨床化学 Vol.36 No.1(2007)