標準化の第一歩は、試料の測定に際し不安定型ヘモグロビンを除き測定し、測定値を日本糖尿病学会が配布する標品Lot.1で補正し測定値とすることで始められました。この手法で施設間差は大幅に縮小されましたが、Lot.1の表示値は当時主として用いられた日常測定法の平均値で値付けられ、この表示値に化学的根拠はありませんでした。
糖尿病関連指標専門委員会グリコヘモグロビン標準化プロジェクトは、st-HbA1Cをほぼ一画分として分離可能な高性能HPLC法の開発に次ぎ、グリコヘモグロビン二次検量用標準物質(Lot.2)を開発し、測定対象をst-HbA1cと定義する新たなJSCC測定体系を作成しました。2001年3月以降、グリコへモグロビンはこの測定体系に準じ化学的に定義された単一のグリコヘモグロビンを基準に測定されるようになりましたが、その表示値は、測定対象定義の変更に伴う数値変更で予想される混乱を避ける措置として、Lot.1の値を引き継いでいます。Lot.2には、Lot.1引継ぎ値(%JDS)の他に、NGSP値(%NGSP)、IFCC値(%IFCC)、KO500法による実測定値(%KO500)値が付されているので、この測定体系ではNGSP値、IFCC値の何れの値へも容易に変換できます。
本邦のグリコヘモグロビン測定の標準化体系は組み上げられ、頑強性を確認するばかりになりました。基準測定施設網の構築が待たれ、基準測定施設網による適正な管理により化学量論に則った施設間差の縮小が望めるようになりました。日常測定においては、各日常測定法のキャリブレーターをLot.2で値付けすることになり、st-HbA1cに遡上性と伝達性を維持した測定が可能となりました。この図はグリコヘモグロビン測定の施設間差の変化を表しています。
グリコヘモグロビン測定の施設間差
<参考文献>
1) 星野忠夫(2004) 糖尿病関連検査の標準化 現状と問題 -国際標準化との関連- HbA1C. 第47回日本糖尿病学会年次学術集会 イブニングセミナー12
2) 富永真琴, 小林功, 桑克彦, 武井泉, 星野忠夫, 芳野原, 菅野剛史, 片山善章, 葛谷英嗣, 桑島正道, 田港朝彦, 牧野英一, 小野順子, 牧田善二, 七里元亮(2002) ヘモグロビンA1C標準物質 JDS Lot2のNGSP値について 45(5):385
3) 富永真琴, 牧野英一, 芳野原, 桑克彦, 武井泉, 青野悠久子, 星野忠夫, 島津章, 三家登喜夫, 桑島正道, 田港朝彦, 小野順子(2003) 糖尿病関連検査の標準化に関する委員会:ヘモグロビンA1C 標準物質 JDS Lot2の IFCC値について. 糖尿病 46(9):775